少し前のことになるが、赤瀬川原平氏が亡くなった。
だからというわけでもないけれど、久しぶりに読み返してみた。
まるで赤瀬川原平の人生の総括のような本だと思った。
この本で触れていないのは、「新解さん」と「櫻画報」ぐらいなのではないだろうか。
もちろん、触れていないからといって、それが重大な瑕疵であるとは思わない。
だが、総括的でありながら赤瀬川原平の入門書かというと、それはちょっと違うと思う。
なぜかと言うと、分かり難いからだ。
赤瀬川原平の仕事のアウトラインを知った上でこの本に読む分には、なるほどそう纏めるのか、とは思うだろう。
しかし、赤瀬川原平とはいったい何者であるか、と思って読んだとすると、冗談のような口ぶりに韜晦されるような気がする。
デュシャンからトマソン、そして、路上観察学会から千利休へと繋がるということを説明されても、一体何のことだろうと思っても不思議ではない。
題材の気軽さ、語り口の軽妙さに騙されて、難解であることを忘れさせてしまうのではないだろうか。
例えば、トマソンについての説明を要約すると、都市の無意識を発見する芸術を超えた存在、ということなのだが、非常に難解に聞こえるだろう。
しかし、物件としての「四谷階段」「無用門」「高所ドア」など、キャッチコピーのセンスや物件の写真によって、理解できたかのように錯覚してしまいそうになる。
それは物件がどういうものかは理解できているとしても、トマソンの概念を理解できている、とは言えないのではないか。
いつの日か、今とは全く異なった文脈で、赤瀬川原平が再評価される日が来るに違いない。
持っているのは岩波同時代ライブラリー版。
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