どこかのSNSか何かで、この本のことが言及されているのを眼にして、ちょっと読んでみようかと思った。
副題は「ガザニガ脳科学講義」である。
原題は「Who's in Charge? Free Will and Science of the Brain」
人間にとって脳とは中枢であり、肉体的な死よりも脳死が死であると判断するぐらいに重要な臓器であろう。
脳が「わたし」の全てであり、脳のメカニズムを解明すれば、つまり生化学的な反応が「わたし」という現象なのではないか、そういう疑問をもし抱いたことがあったら、この本は興味深く読めると思う。
著者のガザニガ氏は認知神経科学の世界的権威だそうである。
脳の機能について様々な実験例から探っていき、私が「わたし」であると認識すること、そして人間とはどういった生き物なのか、という疑問に答えていく。
例えば、脳梁離断手術した癲癇患者への実験により、脳が様々な認知モジュールの並行処理であることを突き止めていったり、入ってきた情報に理由や説明をつけたがるインタープリターモジュールの存在など、脳の働きがスリリングに暴かれていく。
もともと、スコットランドのギフォード講義という講演を元に書かれているため、専門的な内容でありながら読みやすい。
結局、人間は脳が肉体という乗り物を操作しているだけではないか(本の中にも出てくるが、MIBのエイリアンのイメージ)という疑問には、違うというのが結論として示されている。
読み終わるのが惜しい本に久しぶりに出会った。
- 作者: マイケル・S.ガザニガ,Michael S. Gazzaniga,藤井留美
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2014/08/28
- メディア: 単行本
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