雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

2023-01-01から1年間の記事一覧

音楽は自由にする/坂本龍一

坂本龍一氏の自伝である。 とはいえ、2009年に語っているので、それ以降の3.11や闘病生活等は語られていない。 知っていらエピソードもあれば、知らなかったエピソードもある。 こうしてまとめて読んでみて、坂本龍一氏は劣等感に対して色んな努力をして成し…

長電話/高橋悠治、坂本龍一

ふと読み返してみた。 高橋悠治氏と坂本龍一氏が、ホテルの内線電話越しに対談をしている本。 YMOが散開した頃、坂本美雨氏が子供で、両親の曲を聴かされて踊るエピソードが登場する。 若い人たちに関してとか、海外についての印象とか、当時から見た未来の…

藤澤清造短篇集

短編集も読んでみた。 貧乏と性欲が主軸になって、皮肉めいた笑いがあるように思ったが、その感覚はあまりピンとこなかった。 まぁ、そういうこともあるだろう。 藤澤清造短篇集 一夜/刈入れ時/母を殺す 他 (角川文庫) 作者:藤澤 清造 KADOKAWA Amazon 藤…

根津権現裏/藤澤清造

西村賢太氏からの流れで藤澤清造を知る。 私小説というか、狂人をモデルにした独白体の小説、といえばいいのか。 主人公が自殺してしまった友人の話を、友人の兄に語るのが大半で、そこに主人公の独白が交じる。 友人の奇行は、ある種、ユーモラスに描かれる…

カツオが磯野家を片づける日/渡部亜矢

タイトルだけで借りてみた。 波平さんの不慮の逝去によって磯野家のゴミ屋敷問題、遺産相続問題が明らかになる、というハウツー本だった。 と言っても、ふざけているのではなく、いたって真面目である。 磯野家という家族システムのその後という設定が秀逸だ…

東京者がたり/西村賢太

引き続き、西村賢太氏を読んでみる。 江戸川区の出身で、たぶん歳は少し上、バブルや東京の西とは距離のある感じで、なんとなく近しい感じがする作家が、どんな東京を見ていたのか気になった。 取り上げられている町、語られる言葉、どちらも私小説作家らし…

苦役列車/西村賢太

初めて読んだ。 名前は知っていてもなかなか手が伸びなかったのは、私小説だからに他ならない。 私小説というサブジャンルは昔から何となく遠ざけていた。 内面の吐露という、作者のはらわたを見せられているような文章は、つい好きか嫌いかで判断してしまっ…

高円寺純情商店街/ねじめ正一

以前読んだことがある気がしていたのだけれど、実は初見かもしれない。 ねじめ正一氏を知ったのは、10代の頃だと思う。 当時は現代詩を読み漁っていたので、自然と辿り着いたと思う。 とはいえ、詩と小説は全く異なっている。 記憶の中の印象ではあるが、句…

もの思う葦/太宰治

何となく図書館で手に取ってみた。 橋本治氏からの太宰治氏、という訳でもない。 そんな駄洒落で読む本を選んでいたとしたら、それはそれでちょっと自分を見直したい。 恐らく生涯で読む太宰治の5冊目ぐらいの感じだと思う。 あまり好きではないどころか、…

そして、みんなバカになった/橋本治

この本もまた図書館で借りた。 タイトルが全て「かな」っていうのも人を食った付け方だと思うが、やはり現代史の総括&ノスタルジーが続いていて、痛々しくなってくる。 そんな中でも見るべきところがあるとしたら闘病や老いに関するところだろうと思った。 …

たとえ世界が終わっても/橋本治

橋本治氏が残した言葉にどう思っているのかを検証する。 正直なところ、この本は9割退屈だった。 現実世界や歴史に対して、実はこうなんです、要するにこうなんです、といった言説は、ただの言い換えに過ぎないし、出オチの浅薄さにも似ている。 今さらに西…

テロ以降を生きるための私たちのニューテキスト

何となく借りてみた。 9.11に関する23人の意見を編んだ本。 どういう基準で選ばれているのか分からないが、たった23人でさえ異なる意見があるのだから、恐らく数限りない意見があるに違いない。 様々な立場があって、様々な見方があると思うのだが、意見を述…

「原っぱ」という社会がほしい/橋本治

ふとした瞬間に、橋本治氏のことを思い出したので、図書館で借りてみた。 10代から20代前半までの頃に読んだが、それ以降は全く手に取らなかったので、およそ30年ぶりだろうか。 現在はどんな活動をしているのかと思ったら、2019年に逝去されていた。 今更だ…

ロシアン・ジョーク/酒井隆三

気になったので、図書館で借りてみた。 ジョークとは何だろうか、ということを考えていて、アメリカンジョークが有名だけれど、ロシアンジョークはあるのかと思ったら、そんな本があった。 要するに、それぞれの歴史や慣習、有名人をネタにするのが、○○人ジ…

戦争と万博/椹木野衣

とても面白かった。 1970年の大阪万博を起点に、1945年の広島爆心地、そして幻の皇紀2600年万博に言及し、美意識の根底にある「未来」という幻想、そして「環境」という考え、万博と戦争をつなぐ様々な要素を巡っている。 この本を要約するのは難しい。 登場…

近現代日本の発禁本作品選

永井荷風作と伝えられる「四畳半襖の下張」が含まれているので買ってみた。 さすが永井荷風という文章だが、荷風調を真似してる感も否めない。 その他、室生犀星や、森鴎外や、どうしてこれが?という作品もある。 個人的には、「四畳半襖の下張」が読めただ…

汽車旅の酒/吉田健一

一言で言うなら、ふざけた本である。 酒呑みによる、酒呑み中心の論理で書かれたエッセイだ。 たぶん、酒を呑まない人からしたら、屁理屈、こじつけ、言いがかりに見えるかもしれないが、酒を嗜む身からしたら至極真っ当な話ばかりである。 当然、酒を嗜むの…

銀河ヒッチハイク・ガイド/ダグラス・アダムス

ふらっと入ったブッ〇オフで買った。 ある日突然、宇宙のハイウェイ建設のため、地球が消滅して、から始まるドタバタコメディ、スラップスティックなSF。 くだらない部分も多く面白い。 解説にもあったが、笑いのツボが日本とは異なる、というのは思った。 …

ロックで独立する方法/忌野清志郎

ふらっと寄ったブッ〇オフで購入。 キヨシローが亡くなったのは2009年だが、当時はほとんど聴いたりはしていなかった。 RCサクセションを知ったのは、小学生の頃にタモリのラジオで聴いた「トランジスターラジオ」だったと記憶している。 この本は、キヨシロ…

日本の珈琲/奥山儀八郎

気になったので図書館で借りてみた。 コーヒーの歴史から、江戸時代の長崎におけるコーヒーの伝播、そして近代のカフェまで網羅的に言及している本である。 長崎まで行き文献に当たったり、訪日外国人のコーヒーに関する記述、海外漂流者のコーヒーに関する…

脳とクオリア/茂木健一郎

気になったので図書館で借りてみた。 クオリアというのは質感のようなもの、赤い花の赤らしさ、電車のガタンゴトンという音のらしさ、そういったものを表す言葉である。 それが揺るぎないそれであるというらしさ、否定しがたいリアリティのようなもの、とい…

アンビエント・ドライヴァー/細野晴臣

何となく気になっていた本を元旦に注文した。 それが1月2日に届いてしまい、ちょっと吃驚したのだが。 細野晴臣氏の文章は、おっと思うことも、ちょっと怪しいなぁ、と思うことも同じレベルに書かれていて、冷静に読んでしまう。 例えて言うなら、今の精神状…