意図的にずらされた
- 作者: ポールボウルズ,Paul Bowles,飯田隆昭
- 出版社/メーカー: 思潮社
- 発売日: 1994/05
- メディア: 単行本
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以前、ボウルズを読むのは悪癖だと書いた。
そして、再びボウルズである。
この物語はタンジールを訪れたアメリカ人のある種の悲劇に至る物語であるといえる。
ここに登場するのは日常から逸脱であるようにも見える。
また、合理性と非合理性の衝突でもある。
物語は悲劇へと収束していくのだが、それは因果関係ではないし、何かの抒情でもないようだ。
それは不条理なのかというと、抗いがたい運命であるかのようにも見えるし、逸脱行為が目指すところの周縁をめぐる物語にも見える。
訳者解説にあるように、重層的な物語と片付けてしまうのは、何かが違う。
何か意図的に中心をずらしているような、そんな構図をさらに重ねているのではないか、そんな気がする。