芥川龍之介を読むのは、かなり久しぶりだ。
高校生か大学生の頃、以来だろうか。
この「羅生門・鼻」は、所謂、王朝ものの短編を集めている。
国語の教科書に載るくらいなのだから、内容について今更あれこれ書くつもりは無い。
改めて読んでみると、そのスタイルに驚きがある。
端的に言うと、ひとつひとつの文が、むしろひとつひとつの言葉が、凝縮されている。
言葉に無駄が無く、それ以外の言葉ではあり得ない、と思わせるような言葉の選び方だと思った。
そして、それらの言葉が織り成す文は、それ以外の表し方が無いと思わせるような文だ。
それはつまり、言葉と文との繋がり度合いが、非常に高いということだろう。
冗長な表現は無く、かつイメージを刺激するような表現が連なる。
短編小説として、そのスタイルは完璧であろう。
そして、芥川の皮肉めいた笑いが見えるような気がする。
たとえば「羅生門」では、盗人と老婆と死体になってしまった女しか登場しないが、その誰にも感情移入してもいないし、読者を誘おうとしているのでもない。
乱世に暮らす人の姿であり、それは現代(芥川が生きた大正・昭和であり、いまこの平成でもある)とも紙一重であることを、ありありと描いて見せている。
「鼻」や「芋粥」では欲望の表裏を、皮肉めいた視線で描いている。
さらに「好色」に至ると、スカトロジーまで登場する。
そう思うと、芥川は子供に読ませてはいけない本なのではないだろうか、とさえ思えるのだが…
- 作者: 芥川龍之介
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/10
- メディア: 文庫
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