雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

物語

台所のおと/幸田文

幸田文の短編小説集である。 随筆での語りが小説世界では制約になって、どの登場人物も作者の分身となってしまうのではないか、という漠とした不安のようなものがあったのだが、それは杞憂だった。 表題作の「台所のおと」に描かれる料理人を始め、様々な人…

阿修羅のごとく/向田邦子、中野玲子

子供の頃、NHKのドラマで観た記憶がある。 オープニングはトルコのCeddin Dedenで、これがとても印象的だった。 その後民族音楽を聴くきっかけだったと言っても、過言ではない。 名取裕子が出演してたように記憶していたが、これは勘違いだったようだ。 ドラ…

湾岸道路/片岡義男

とても奇妙な物語だ。 主人公は美人だが金銭感覚の無い妻と、スポーツジムのインストラクターでカッコイイ事が判断基準の夫、という組み合わせだ。 まず目につくのは、二人共、会話が恐ろしく短い。 ほとんど単語で会話をして、自分語りなどしない。 だが、…

雨の日には車をみがいて/五木寛之

初めて五木寛之の小説を読んだ。 雑に言ってしまえば、主人公の女性遍歴と車遍歴をテーマにした短編集というところだろうか。 だが、それぞれの車についての印象もさることながら、様々な女性との付き合い方も面白い。 それは恋愛に至るまでの過程だったり、…

泰平ヨンの未来学会議/スタニスワフ・レム

レムの泰平ヨンシリーズを借りてみた。 未来学会議でテロに巻き込まれ、脳移植を経て未来世界で目を覚ますと、そこはドラッグ漬けの世界で、というドタバタSF。 ドラッグ社会を批判しているとかって感想も見るが、批判しているだろうか。 むしろ、現実とは何…

夏への扉/ロバート・A・ハインライン

何故か、この本を読んでいなかった。 SFの入り口がウェルズ、ヴェルヌ、小松左京、眉村卓であった小中学生の頃、長編は長すぎるからだろう。(小松左京の長編も、ほとんど未読) なので、ちょっと読んでみようかという気になった。 読んでみたら面白い。 中…

きょうも上天気/浅倉久志 訳、大森望 編

ふと図書館で眼についたので借りてみた。 浅倉久志が翻訳したSFの短編のアンソロジーである。 バラードやヴォネガットの作品は、以前読んだことがあったが、あまりピンとくる作品がなかった。 久しぶりに活字を読んだので、読めてないのかもしれない。 きょ…

美しい星/三島由紀夫

ミシマの作品の中でも、異色な作品。 自らを異星人だと信じている一家の物語である。 この物語がイカれているのは、自らを異星人だと信じているのはこの一家だけではない。 それぞれが異星人であるという出自を根拠に、とても人間らしい振る舞いなのだが、地…

奇貨/松浦理英子

久しぶりに訪れたブック○フで偶然に見つける。 チェーン系の古本屋での価格付けは、本の状態と店頭売上高が基準になっているようで、人文、文学の中堅どころとでも言うべき本はかなり格安で手に入れられることがある。 これが本当に好きな人しか買わないよう…

鍵/谷崎潤一郎

本当は電子書籍版の全集で読んだのだけれど、そのことをいちいち言うのもどうかと思って、これからは気になったものだけ取り上げようかと思う。 「鍵」は何度も映画化もされているから、有名な作品だろう。 読まれないように小細工をしながら、読まれること…

発想力獲得食/眉村卓

ジュブナイルではない眉村卓を読んでみたくて借りてみた。 この本は食にまつわるショートショートである。 SFっぽいのもあればそうでないものもある。 どの話もちょっと洒落ていて、ユーモアがある。 もう少し読んでみようかと思った。 発想力獲得食 (双葉文…

マルドゥック・フラグメンツ/ 冲方丁

冲方丁が気になって、もう一冊借りてきた。 この前のはエッセイのようなものだったので、時代小説かSFか。 だがいきなり長編世界に飛び込むのは気が引けたので、短編集に手を出した。 だがこの選択は、結果的には失敗だった。 この本はマルドゥックシリーズ…

人民は弱し 官吏は強し/星新一

この本もまた図書館で借りた。 星新一の父、星一氏の伝記小説である。 面白い?面白いだろうか? 星製薬の盛衰を描いているとも言えるし、星一氏と明治日本官僚の攻防を描いているとも言える。 判官贔屓というと失礼だが手放しに、官僚は腐っている、星氏か…

男どき女どき/向田邦子

この本もまた、図書館で借りた。 歳をとって、向田邦子を読むようになった。 この本で扱われているテーマは、人生の機微のようなものだ。 歳を取ると些細なことにも涙脆くなる。 そんな些細なことに共感する自分がいる。 子供は大きな物語が好きだ。 例えば…

高円寺純情商店街/ねじめ正一

この本のまた図書館で借りた。 ねじめ正一が現代詩の詩人であることと、松浦寿輝が詩人であったことは、少し違う気がする。 二人とも1980年代の頃に散文詩作品があり、当時は読んでいた。 私自身は松浦寿輝の方が好みだったが、この作品を読むと、ねじめ正一…

ねらわれた学園/眉村卓

この本もまた図書館で借りた。 言うまでも無く、ジュブナイルの傑作としてよく知られている本である。 遥か昔の子供の頃に、NHKのドラマで見た記憶があるが、すっかり内容を忘れているので、読んでみた。 判りやすくてテンポの良いストーリーであり、あっと…

空港にて/村上龍

この本もまた図書館で借りた。 一瞬を引き伸ばして描写し、心理的な時間を表す書き方は、なかなか面白い。 ここに描かれる人の姿とは何だろう。 何か大きな物語があるわけでもなく、ちょっとした日常の一場面のようなものだ。 見かけは平穏な日常の中で、心…

スローなブギにしてくれ/片岡義男

この本もまた電子書籍である。 というか、ブック○フに一冊も無かった。 そういうものなのか。 この本が出た当初は読もうなんて思いもしなかった。 ただ、南佳孝の同名の曲は気に入っていた。 バイク乗りの少年が、第三京浜で捨てられた猫と女を拾って、一緒…

坊ちゃん/夏目漱石

久しぶりに漱石を再読。 これもまた電子書籍である。 子供の頃は分かってなかったが、主人公の発する悪口が堪らない。 悪口のバリエーションを、もっと増やしたいと思った。 なかなか日常で発する悪口は、相手の資質そのものを否定するだけだから、そういう…

怪夢/夢野久作

これもまた電子書籍である。 新幹線の中で電子書籍を読んでいると、いつのまにかうとうとしてしまう。 だからどれを読んだのか思い出せないのもあるのだけれど、これは記憶に残った。 短い話を幾つかまとめているけれど、どれも薄気味悪くて、読後感があまり…

人間レコード/夢野久作

これもまた電子書籍で読んだ。 青空文庫に夢野久作が入っていると気付いて、久しぶりに読んでみようかとDL。 たぶん読んだことが無い。 読み出して、あれ?これって、ウィリアム・ギブスンの「記憶屋ジョニイ」じゃないか、と。 人間レコード 作者: 夢野久作…

檸檬/梶井基次郎

実は電子書籍で読んでいるのだけれども、一話一話、画像を張り付けるのも何なので、最初に読んだ時の新潮文庫の画像を張り付けることにした。 久しぶりに読み返して見ると、微かな違和感がある。 書いていることが判らないとか、不快だということではないの…

春琴抄/谷崎潤一郎

この本もまた電子書籍である。 ちょっとした調べ物で、読み返してみた。 谷崎はどうも肌に合わない。 嫌いじゃない気もするのだけれど、最近はあまり読みたいと思わない。 耽美的なものに対する憧れのようなもの、が鼻につくのだろうか。 この物語の中心は、…

鬼/織田作之助

この本もまた電子書籍である。 織田作之助にでも手を出してみるかと思い立ち、探してみるとやはり青空文庫に入っている。 とりあえず短そうなものから手を付ける。 主人公の辻は文筆業で仕事になると、やたらと煙草を喫み、その他のことがずぼらになってしま…

半島一奇抄/泉鏡花

この本もまた電子書籍である。 伊豆を舞台とした化け物話である。 化け物が何であるかを書くとつまらないので書かないが、遠近感の歪んだ感じが良い佳品だろう。 半島一奇抄 作者: 泉鏡花 発売日: 2012/09/13 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る

怪談女の輪/泉鏡花

この本もまた電子書籍で読んだ。 まさか、泉鏡花を電子書籍で読むとは。 泉鏡花の文章には独特のリズムがあって、それに乗るとするすると頭に入ってくる。 ただ、独特の当て字というか、創作文字がインターネットの世界では再現できない。 そもそも、康煕字…

明治開化安吾捕物帖/坂口安吾

この本もまた電子書籍である。 しかし、こういった店頭で見かけたことのない本が、電子書籍になって、気軽に読めるのはとても有難い。 この本は坂口安吾による探偵物の連作である。 主人公は結城新十郎、そして勝海舟で、明治初期の東京を舞台に怪事件の謎を…

真景累ヶ淵/三遊亭円朝

この本もまた電子書籍で読んだ。 すっかり手放せない。 怪談の古典で、因果応報で連なっていく殺人話。 何が恐いかって、この世の因果ってこと。 真景累ヶ淵 作者: 三遊亭円朝 発売日: 2012/09/27 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 真景累ヶ淵…

銀河鉄道の夜/宮沢賢治

久しぶりに読んでみた。 初めて読んだのは、小学生の時だ。 当時、何を思ったのか覚えていないが、当時から好きな作品であることは間違いない。 僅かに分別のついた大人になって読み返してみると、宗教的な点が気になってしまう。 もちろんそれが、弱点なの…

二流の人/坂口安吾

この本もまた電子書籍である。 この話の中心は黒田如水である。 坂口安吾が言う二流とはメインストリームではないが重要な、というぐらいの意味だろうか。 一流になりきれない、二流であることを貶めながら、どこかで好ましく思っているようにも見える。 戦…