雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

都会の鳥の生態学/唐沢孝一

都市における野鳥の生態を観察レポートしている。 普段何気なく目にする燕、雀、烏といった鳥がこの本での主役である。 巣作り、食餌、そして鳥同士の覇権争いと、長年の観察から得られた生態が語られる。 特に違う種類の鳥同士が、共通の敵を攻撃したりする…

図解ドラッカー入門/森岡謙

1時間でわかるとあるが、確かに1時間ちょっとで読み終わったと思う。 これも知り合いが不要になったので、とりあえず読んでみた。 ドラッカーについてなにかを語るほど、ビジネスというものに興味はない、というのを再認識した。 ビジネスと言われる人間の活…

トヨタで学んだ「紙1枚」にまとめる技術〔超実践編〕/浅田すぐる

知り合いが要らないというので、引き取って読んでみた。 こういうビジネス書の感想に意味は無いし、一時期流行ったまとめなんて、読んだ気にさせるだけであって、百害あって一利なし、なんじゃないかと思うのだけど、そんな意見を自分の周りでは聞かないので…

55歳からやりたいことを全部やる!時間術/臼井由妃

この本もまた図書館で借りた。 このところ年齢で目を引く本が増えたなと思う。 そしてまたその戦略に引っかかって読んでみた。 内容はいわゆる高齢者としての時間の考え方のTipsといったものだろう。 実用的であり、今すぐ使えるアイデアだと思う。 実はその…

エジプトの空の下/飯山陽

引き続き、飯山陽氏の本を読む。 著者がエジプト滞在中の体験と、ムバラク体制の崩壊、モルシ体制の崩壊、という2つの革命を通じて、エジプトのイスラム教の姿を描いている。 平易な文章と、日常生活が中心の随筆なのだけれど、扱われているテーマは重い。 …

中東問題再考/飯山陽

知り合いから勧められていても、何となく読もうという気になれなかったのだけれど、今回のイスラエル紛争で読んでみようかという気になった。 著者について、ここで解説しなくても良いだろう。 この本は、イスラム社会で起きている問題の概観を解説した本だ…

あなたに似た人/ロアルド・ダール

ふと、衝動買いをした一冊。 ミステリーというか、ショートショートというか、奇妙な味の短編と言われてたらしい。 なるほど、話のオチがちょっと薄気味悪かったり、どんでん返しだったりする。 ふと思ったのだけれど、阿刀田高に似ているのかもしれない。 …

浮世女房洒落日記/木内昇

神田の小間物屋の女将さんの日記を、大正時代の無名の作家が現代語訳した本が、自宅の屋根裏で見つかった、という物語。 額縁小説の体で、江戸の町民の1年間の生活が描かれる。 日常が描かれるから、特段のドラマチックな展開があるわけではない。 どちらか…

過剰可視化社会/與那覇潤

どこでお勧めされたか覚えていない。 著者の與那覇潤氏についても良く知らないが、なるほどなと思うところの多い本ではあった。 コロナ禍に見舞われた日本社会を観察している。 社会学だろうか、評論家風な言説だと思っていたら、本人が評論家としての最初の…

まとまらない人/坂口恭平

坂口恭平氏の本を初めて読んだ。 何というか、自己肯定感の強い人だと思った。 躁鬱状態にあるらしいので、一概に、というか、人となりとしてそう言い切るのは異なるかもしれない。 もう少し正確に言うなら、自己肯定感に溢れている本だと思った。 坂口恭平…

新記号論/石田英敬、東浩紀

どこでおすすめされたか忘れたけれど、図書館で借りて読んでみた。 石田英敬氏は東大の教授らしい。 東浩紀氏は90年代からたまに読んでいる思想家、論客である。 タイトルの通り、記号論の刷新であり、今までの記号論が前提としていたアナログメディアからの…

ふるさとの手帖/かつお

だいぶ前に買ったのだけれど、一気に読んでしまうのがもったいなくて、ちびちびと読んでいた。 けれど読書というのは、ある程度、まとまった時間をかけないと読んだ気にもならなくて、たかだか数ページ読んで閉じてを繰り返していても、感想も何も生まれない…

明るい部屋/ロラン・バルト

久しぶりにロラン・バルトを読み返してみる。 この本は写真を巡る考察でありながら、彼の母親の思い出、そして家族の歴史に遡る本でもある。 ストゥディウムとプンクトゥムという概念から写真の意味を定義する。 写真が表しているコードがストゥディウム、そ…

神戸・続神戸/西東三鬼

西東三鬼の名前は、現代俳句を漁っていた頃に知り、戦前の京大俳句事件や、現代俳句の表現を知るきっかけとなった一人である。 とはいえ、朝日文庫の「現代俳句の世界9 西東三鬼集」を読みかけた程度で、深く掘ってはいなかった。 そもそも現代俳人の句集が…

電柱鳥類学/三上修

電線に留まる鳥に着目した本、というか、鳥が留まる電線、電柱に関する本、のような気がした。 どこで見かけたのか分からないが、ちょっと気になるタイトルだったので借りてみた。 面白いと思うのだけれど、話が散漫になってしまっているような気がした。 電…

父 吉田健一/吉田暁子

吉田健一の娘さんの本があると知り読んでみた。 生前の吉田健一を知らないが、語られる姿は文士というよりは、サラリーマンのようだと思った。 もっと破天荒だったり桁外れなところがあるのが文士だという読者の勝手な想像とは異なっている。 恐らく家族の目…

ジャズソングブック/五味太郎

ふと、五味太郎氏のエッセイはないかと、図書館の蔵書検索で見つけた本。 何も確認せずに予約したら、受け取りの時に想定外の大きさで笑いそうになった。 内容はジャズのスタンダードの歌詞の対訳と、曲にインスパイアされた絵である。 歌詞の情景のようでも…

なぜノンフィクション作家はお化けが視えるのか/工藤美代子

「日々是怪談」を加筆訂正の上、改題した本だという。 工藤美代子氏の本はこれが初めてである。 ノンフィクションという分野にあまり食指が動いてないせいだと思う。 フィクションでない文章なんてない、と思っているから、正面切ってノンフィクションと言わ…

ほら吹き男爵の冒険/ゴットフリート・アウグスト・ビュルガー

子供の頃、読んだ覚えがあるが、なんとなくしか覚えていない本である。 改めて光文社古典新訳文庫で読み返してみる。 ミュンヒハウゼン男爵は実在する人物であるが、モデルとしてこのような法螺話が世界中で広く読まれているというのは、なんとも愉快ではな…

わが人生処方/吉田健一

気になってた吉田健一のエッセイ集を読んだ。 恐らく様々なところに発表された、ちょっとしたエッセイを再構成したもののようで、同じタイトルのエッセイが並んでいたりする。 それはともかく、人生処方とは何だろう、人生訓みたいなものだろうかと想像して…

象の記憶/川添象郎

この本もまた図書館で借りた。 高橋幸宏氏、坂本龍一氏の逝去に伴って、村井邦彦氏の動画やYMO結成秘話的なエピソードが溢れたように思う。 そんな中で、川添象郎氏の名前を知り、この本を知った。 川添象郎氏のエピソードについては、Wikipediaを始め様々に…

無人島のふたり/山本文緒

どこでどう知ったのか覚えていないが、小説家の山本文緒氏の闘病記を図書館で借りた。 膵臓癌で余命4か月と宣告されて日記が始まる。 綴られる言葉は、苦痛の訴えや悲しみだけではなく、周りの人々への感謝が多い。 病によって生活が一変してしまう中で、緩…

思い出トランプ/向田邦子

酔っぱらったときに買った一冊。 13篇の短篇小説集。 だから、トランプなのだと読み始めて気づいた。 向田邦子を読むようになったのは30代後半からだった。 本当に面白いと思えるようになったのは40代後半以降かもしれない。 この本も読んだつもりでいたけれ…

詩の力/吉本隆明

久しぶりに読み返してみる。 晩年の吉本隆明の日本近現代詩の解説である。 口述筆記のおかげか、平明で分かりやすい言葉が選ばれていると思った。 必ずしも年代順に系統立てて紹介しているわけではないが、話の流れのようなものはある。 現代の(とは言って…

文藝百物語/井上雅彦、田中文雄、森真沙子、加門七海、菊池秀行、篠田節子、霧島ケイ、竹内義和

怪談というのは、聞いている人の感情に訴えかける、古来のエンターテインメントであり、語りの力が影響するものだろう。 百物語とは怪談を持ち寄り、一話話す毎に蝋燭を一本づゝ消していき、やがて百本目が消えたとき怪異が出現する、という。 都内某所と伏…

ドラえもん最新ひみつ道具大事典

だいぶ前に買ったのだけれど、時々拾い読みしては止めていた。 ようやく読み終えた。 ドラえもんに登場するひみつ道具の解説本であるが、ほとんど忘れていた。 荒唐無稽なのが多いが、当時の社会情勢を反映したかのようなものが、たまに混じっている。 ドラ…

デュシャンは語る/マルセル・デュシャン、ピエール・カバンヌ

1960年代に行われたマルセル・デュシャンへのインタビュー本である。 何度か読んでいるが、内容を覚えていないのは、物覚えが悪いからだろう。 ブルトンのシュルレアリスムと距離を持ちながら、網膜的ではない美術を目指すデュシャンもまたシュルレアリスト…

死の海を泳いで/ディヴィッド・リーフ

息子であるディヴィッド・リーフ氏によるスーザン・ソンタグの臨終に至る回想である。 臨終記というと花屋日記が思い浮かぶが、こちらは感傷的な記憶の記録のようなものだと思った。 この本からソンタグの思考を読み取ろうとするなら、確率で人生を決めては…

他者の苦痛へのまなざし/スーザン・ソンタグ

本に呼ばれる、という感覚がある。 読みたいな、というのではなく、あ、これは読まないといけない本だ、と思ってしまう感じに近い。 読まなければいけない、というのは義務でもないし、何かタスク的なものでもないが、切迫感はある。 オカルトっぽい「呼ばれ…

酒宴/残光 吉田健一短篇小説集成

久しぶりに吉田健一の小説を読む。 どこかで読んだことのある短篇も、初めて読む短篇もあった。 回りくどい言い回しと、うねうねと蛇行するような話の筋は、吉田健一ならではだ。 謎の外国人の話、酔っぱらいの話、旅の話、どの話もちょっと変で、ちょっとユ…