2011-01-01から1年間の記事一覧
怪談とは、怖がらせるというエンターテイメントである、と仮に定義してみると、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の怪談は、異なるような気がする。 集められた話は、非日常的であり、気味の悪い話ではある。 だがそれ以上に、人々の思いにまつわる話である…
時代設定としては、ベトナム戦争の頃、'60後半〜'70前半辺りだろうか。 自称カメラマンだが、ドラッグでラリって、女と寝て、借金取りに追い回されている主人公・双真が、謎の女・魔子に誘われるように三月町へと迷い込む。 そこは、人々は『ウサギ』に魂を…
以前は持っていたはずだが、いつだか手放した覚えがあったので、図書館で借りて読んでみる。 この本は、大正末期から昭和初期にかけての創作と、昭和初期から昭和30年代頃までの批評からいくつか拾い集めているようだ。 つまり、50年から70年前の文章である…
日本について考えることは難しい。 飛行機に乗れば、離陸していくにつれて、住んでいる街が小さく遠ざかってゆく。 そこに見えるのは日本の街であるに違いない。 例えば、中国人の友人と話していると、日本人である自分を意識する。 だが、自分にとって日本…
何で詩を読むの、とか、詩は何が面白いの、とか聞かれても、答えようがない。 時々、詩を読みたくなるのだし、面白くないものなど読もうとは思わないだろう。 ふと本屋でこの詩集が目に留まったので買ってみた。 別にミッキー・マウスが好きなわけでもない。…
目的もなく旅に出る。 旅というよりはただ列車に乗る。 現代で言うところの「乗り鉄」に近いのかもしれないが、目的があってはならない。 「阿房と云うのは、人の思わくに調子を合わせてそう云うだけの話で、自分で勿論阿房だなどと考えてはいない。用事がな…
ISIS本座が9月いっぱいで、サービス終了とのお知らせが届いた。 Web上で本棚を作れること、本好きのコミュニティ的な要素を期待して利用していたのだが、登録から1年余りで閉鎖とはいささか残念ではある。 コミュニティについては、もとからまめでない質な…
ふらりと寄った古本屋で、久しぶりに松浦理英子の名前を見つけたので購入した。 雑誌に連載していた人生相談らしい。 世の中には様々な人がいて、それぞれの事情があって、いろんな悩みを抱えている。 そういえば、人生相談というものが苦手だった、というの…
持っていたはずなのに、本棚に見当たらない。 いつの間にか処分してしまったのだろうか? ということで、図書館で借りてみる。 本当にこの本は読んだことがあったのだろうか? どの短編も記憶にない。 この本に辿り着く前に、新潮文庫の3冊揃いの短編集を読…
引き続き、笙野頼子を読み続けてみる。 この本に収録された「海獣」「冬眠」「夢の死体」といった作品は、Yという女性が主人公である。 どうやら別の土地から、京都にやって来て住んでいる。 特に定職も無いようだが、時折、東京にも行く。 それとなく、文筆…
笙野頼子と言えば、「タイムスリップ・コンビナート」としか答えられない程度の、聊か恥ずかしくなるほどの乏しい知識しかないので、ちょっと読んでみようかと図書館で借りてみた。 最初期の「極楽」「大祭」「皇帝」の三作が収められている。 これは何の物…
やじさんきたさんの名前ぐらいは知っていても、実際に読んでなかったので、図書館で借りてみた。 全編、悪戯と駄洒落と狂歌の旅だ。 下ネタも各地の方言も満載だ。 江戸から逃れるように旅に出たものの、逃避行ではない。 悪戯を繰り返し、決まってひどい目…
ふと読みたくなって、一気読みしてしまった。 大阪・東淀川の豆腐屋が舞台である。 主人公は、変な髪形の母親・八子と、豆腐のことしか頭にない兄・保、お気楽な弟・進の一家だ。 物語は、そんな一家が中心になっている、ホームドラマである。 大きなテーマ…
「弓浦市」が読みたくて、図書館で借りてみた。 それは、こんな話だ。 来客中の主人公の小説家のところに、30年前に九州の弓浦市で会ったという女性が訪ねてくる。 再会できたことを懐かしがり、当時の思い出を語る。 だが、主人公には全く身に覚えがない。 …
旅先で出会うエキセントリックな人、或いは思いもよらない出来事、そんな小説といえようか。 そして読点も無く続いてゆく文章は、ある種のうねりのようだ。 その文体のリズムに乗れれば、物語に酔うことが出来るかもしれない。 悪く言えば荒唐無稽な物語かも…
初めて読んだ川端康成の作品がこの本だったのを覚えている。 「雪国」でも「伊豆の踊り子」でもなく、どうやってこの本に辿り着いたのかは、もう覚えていない。 表題作「眠れる美女」は、とある宿に、主人公である江口老人が訪ねるところから物語が始まる。 …
ヘッセを知ったのは、高校の倫理の授業で、「車輪の下」を読んだからだと思う。 だが、「車輪の下」がどんな物語だったのかも覚えていないし、そのときに買ったであろう文庫本も、もう本棚には見当たらない。 そんなヘッセの作品でも、この「シッダールタ」…
「散歩のとき何か食べたくなって」とは、なんと巧いタイトルだろうか。 つい手を伸ばしてみたくなるように、読者をくすぐる。 内容としては、思い出の中の美味しい店、と言ったところか。 恐らく著者の知識、思い出の全てを、さらけ出しているのではないだろ…
サンカとは何者か、三角寛とは一体誰か、それらについて何らか知らなければ、この本を読もうとは思わないだろう。 サンカとはどんな人々だったのか、という点については、あまり明らかになってはいないのが現状のようだ。 だが、そういった人々について、判…
ハンガリーのポラニー兄弟の弟。 兄は経済人類学者のカール・ポラニー(マジャール語では、ポラーニ・カーロイ)であり、その弟である、マイケル・ポラニー(ポラーニ・ミハーイ)は化学者にして、科学哲学者とでも言うべきか。 何よりも「暗黙知」を提唱し…
バナナを通して、フィリピンとアメリカと日本、生産者と地主と多国籍企業、様々な人々の姿、問題を浮き上がらせる。 国際社会における南北問題が単なる不平等貿易の是正に還元されるべき問題ではなく、様々な要因が絡み合ったものであることが判る。 単純化…
今度はバラードを手に取る。 この本は、「コンクリート・アイランド」「ハイ・ライズ」と共に、テクノロジー三部作とも称される。 だが、それよりもこの本は、類稀なるポルノ小説なのだと思う。 テクノロジーの発達が人間の心理にどんな影響を及ぼすか、とい…
別の本を読んでいたのだが、息抜きに読み始めたこちらの本が先に読み終わった。 怪奇譚と言いつつ、原題は「Cuentos Breves y Extraordinarios」つまり、Extraordinaryで短い話、普通じゃないぐらいのニュアンスだろうか。 それにしても、古今東西の文献から…
もう10年ぐらい前のことになるだろうか。 後輩とこんな会話をしたことがある。 「最近、何か読んでますか?」 「そうだねぇ、ボウルズとか…」 「どんな話なんですか?」 「一見、平和そうな主人公たちが、酷い目に遭うっていう、救いの無い話」 「…何でそん…
この本もまた、買ったのに読んでいなかった本だ。 タイトルの「アメリカの鱒釣り」Trout Fishing In Americaが、何を意味しているのか、それは解らずじまいだった。 何か大切なことを篭めているようにも見えるが、実は下らないことかもしれない。 もしかする…
いまさら、ボルヘスについて改めて書く必要もないだろう。 この本は、ボルヘスの第一短編集だそうだ。 だいぶ前に買っていたはずなのに、なぜか今まで読んでいなかった。 表題の連作は、歴史上、悪党と呼ばれる側の人物に光を当てている。 この本には、表題…
ワイルド・ボーイズは1969年頃の北アフリカ(主にモロッコ)から、アフリカ、中南米、東南アジアの密林を中心に全世界に広まった少年の集団だ。 少年たちは、殺人、誘拐、強盗、戦闘、ドラッグ、男色といった、まあ世間的には非道徳的、非合法的な活動を行い…
実は、古井由吉については、良く知らない。 持っているのもこの本だけである。 文学史上は「内向の世代」と言われるようだ。 でも、世代で文学を捉えて、それで何かが解かったつもりになっていたとしたら、最初から本を読む必要はないんじゃないだろうか? …
田村隆一氏の名前を知ったのは、吉本隆明氏の本を読むようになって、「荒地グループ」と称される詩人たちの存在を知ってからだったように思う。 既にその頃は、田村隆一氏は老境の域に達していたと思う。 時折、詩誌で発表される詩は、諧謔とユーモアの中に…
例えば、何か本が読みたいと思う時、どう選ぶのかは悩ましい問題だと思う。 誰が読みたい、とか、何が読みたい、などと意識しているのならばともかく、ただ何となく何かが読みたいという時に何を選んだらいいのだろう。 とりあえず手にとって、パラパラとめ…