歌謡の地層
- 作者: 浅野建二
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1984/01/17
- メディア: 文庫
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この本は、近世の諸国の歌謡を集めたアンソロジーである。
人の集まる席で披露されて、歌う人、舞う人、涙する人、笑い転げる人、そして人の口から口へと伝えられていったものだろう。
集められた歌は、バラエティに富んでいる。
ユーモアあり、恨み節あり、恋の歌あり、叙景あり、だがどれも明るいのだ。
明るいという表現が適切に言い表されているか判らないが、読んだ感覚として明るい感じがする。
それは、近代以降の詩歌のように、個人の中で凝り固まった言葉ではないからかもしれない。
人々の中に流通することで、洗練され、深化されているような気がする。
だから、この本は読んで終わる本ではないのではないだろうか?
この内容をもう一度、人々の中に解き放ち、流通させるのが必要なのかもしれない。
もうひとつ、
中世の歌謡である梁塵秘抄もそうだが、五・七・五・七・七という和歌の定型ではない。
五と七の自由な組み合わせで、作られている。
たぶんこれは、歌うことを前提にしているから、節まわしによって七・五・七・五だったり、七・七・五だったりするのだろう。
(ちなみに、奄美や沖縄の琉歌は八・八・八・六が基本であり、沖縄民謡の節まわしの独特さに深い関係があるのだろう、と思っている)
詩歌と歌謡、歌謡の地層、歌謡の世界は深いのかもしれない。