ミシマの作品の中でも、異色な作品。
自らを異星人だと信じている一家の物語である。
この物語がイカれているのは、自らを異星人だと信じているのはこの一家だけではない。
それぞれが異星人であるという出自を根拠に、とても人間らしい振る舞いなのだが、地球人を見下して暮らしている。
寓意としての異星人という構造を、時代背景としての東西冷戦、放射能懸念、政治不安を絡めて行くという、ミシマならではのポップさに溢れているのだが、悪趣味なことに物語中にUFOが何度か登場する。
UFOなど実在せず、異星人だと思い込んでいる人間の物語のはずが、UFOが登場することで寓意が寓意ではない状態に放り出されてしまう。
異性人たちが語るイデオロギーは、現実の誰かのカリカチュアだったはずが、イデオロギーそのものを皮肉めいた笑いに変えてしまう。
ミシマの仕掛ける悪趣味なポップさは、そろそろ評価されても良い頃なのではないだろうか。