雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

美しい星/三島由紀夫

ミシマの作品の中でも、異色な作品。

自らを異星人だと信じている一家の物語である。

この物語がイカれているのは、自らを異星人だと信じているのはこの一家だけではない。

それぞれが異星人であるという出自を根拠に、とても人間らしい振る舞いなのだが、地球人を見下して暮らしている。

寓意としての異星人という構造を、時代背景としての東西冷戦、放射能懸念、政治不安を絡めて行くという、ミシマならではのポップさに溢れているのだが、悪趣味なことに物語中にUFOが何度か登場する。

UFOなど実在せず、異星人だと思い込んでいる人間の物語のはずが、UFOが登場することで寓意が寓意ではない状態に放り出されてしまう。

異性人たちが語るイデオロギーは、現実の誰かのカリカチュアだったはずが、イデオロギーそのものを皮肉めいた笑いに変えてしまう。

ミシマの仕掛ける悪趣味なポップさは、そろそろ評価されても良い頃なのではないだろうか。

 

美しい星 (新潮文庫)

美しい星 (新潮文庫)